徒然なるままに垂れ流します。
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伸ばした腕は、微塵となって消えてしまった。
声は、とうに出ない。
視界はくすみ、暗く狭くなっていく。
血も、痛みも、何もなく。
ただ、静かにその時は近づく。
月聖の導きを、拒むつもりはない。
このまま取り込まれてしまうのだとしても、それはそれで構わない。
ああ、でも、叶う事ならば。
もう一度。
もう一目。
瞬きに満たぬ刹那でも。
高く深い、この闇空の果てに。
不快な目覚めだった。
何十年、何百年とも知れない長い眠りの終わりとしては、この上なく悪い。
人間からすれば永遠とも思える時間を生き、幾多の眠りと目覚めを数えたが、ここまで不快な事は未だかつて無かった。
込み上げてくる不快感を処理しきれずに、苛立ちが募る。
彼は、この領域の創造主にして、支配者だった。
界と界の狭間、何も無い虚無の空間に力を巡らせて場を固定し、自らの牙城とした。
黒よりも暗い闇の空、果てなく続く平らな大地。
ここは、彼の世界だった。
極まれに転がり落ちてくる人間で遊び、時折響く呼び声に気まぐれに応え、そうして、思うが侭に振舞う。
それが許される立場であり、それを通しきる力が、彼にはあった。
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